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引っ越し
悟は、生まれてからずっと父の実家で暮らしていた。
幼稚園も小学校もずっとそこから通っていたので、友達も結構多くいた。
でも、悟が中学校にあがる年の3月。
父親の仕事の都合で随分と離れた場所への引っ越しが決まった。
悟の母は、元々早く父の実家を出たかったので、当然のように一緒について行くことになった。
悟は友達と離れるのは嫌なので、父の実家に残りたいと言い張ったのだが、これが高校生だったらおいていってもらえたかもしれないが、まだようやく中学生の義務教育中だったので、父も母もそれは許してはくれなかった。
「また新しい場所で友達を作ればいいじゃないか。」
父はそう、簡単に言うのだが、悟は結構な人見知りなので、これまで一緒にいてくれた近所の3人組がいなければ、小学校のクラス替えがあった時だって、多分うまくなじめなかっだろうと思っていた。
一郎。里子。夕子。それに悟。この4人は家も近所だったし、幼稚園から一緒だった。
悟が中々幼稚園でもなじめなかった時にいつも一緒にいてくれた優しい里子。友達になってあげて、と幼稚園の先生に頼まれてそれからはいつも遊びに誘ってくれた明るい一郎。里子と大の仲良しだったので自然に仲良くなった夕子。
この3人がいなかったら、多分、友達ができないまま中学校生活は終わるのだろうと、悟は考え、高校は父の実家のそばの高校を受けようとひそかに考えた。
少し揉めながらも引っ越しの日はやってきた。
引っ越しのトラックの横で、悟は3人に別れを告げる。
「俺、高校はこっちの高校受けるつもりだから。待ってくれよな。」
「そうなの?待ってるよ。でもさ、中学校からだったら、途中での転校生でもないわけだし、案外友達も見つかるかもしれないじゃん。」
と、一郎。
「そうだよ。それに、連絡取れないわけじゃなし、中学になったらスマホ買ってもらえるじゃん。連絡するよ。」
と、里子。
「あ~、最初は番号とかわからないからとりあえず、手紙?家電無いし、親の電話に掛けるわけにもいかないもんね。」
と、夕子。
「うん。そうだな。皆の住所は知ってるし。とにかく手紙書くよ。」
悟は両親にせかされて、引っ越しのトラックが出発すると、大急ぎで車に乗り、引っ越し先へと出発した。
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