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それから1ヶ月
「蒼渚……」
「おはよう、莉玖」
「俺の弟は……俺の弟じゃなかった事が判明した……」
「……そうか。何歳だったんだ?」
「……え?15歳……って……なんで……」
「上の姉2人、もう子供居るから。男だって分かってる時期なんて、服もオモチャも必要以上に買って、家の中ベビーグッズが占領してるもんだよ」
「なっ?!じゃあ蒼渚、お前………」
こいつ、分かってて……
「なんっだよ!俺1人で勘違いしてたのかよ!」
「良かったじゃん?世話しなきゃなんない弟じゃなくて」
「そりゃ……まあ、そうだけど……」
チラリと蒼渚が俺の顔を見ると、
「……莉玖なら大丈夫っしょ。俺の友達やってんだから」
「なんか……聞いても理解出来ないくらい、遠い親戚らしいんだけど……」
「……15って中3?受験生?」
「あっ……」
受験……
そんな時期に……
「……そうか…そうだよな?来週来るって言ってたけど……そっか……だから父さん、真っ先に机作ってたのか……」
「ま、コミュニケーション能力に関しては何も出来ないけど、俺に出来る事あったら協力するから、言えよ」
「でも、お前4人兄弟だったよな?俺ずっと一人っ子だったからさ。気をつけた方がいい事とか、アドバイスくれ」
「無理だ」
「おい~!たった今、出来る事協力するって言ったばかりじゃねぇか!」
「俺は4人姉弟だが、姉3人で俺が末っ子だ。俺の悲惨な末っ子人生について聞きたいのなら話してやるが?」
「え?いや……やっぱ、それは別の奴に聞こうかな……」
「おい~神谷!弟君は、順調に育ってるか?」
育ち過ぎてんだよ……
「お前、その歳でオムツ替え、マスター出来んじゃね?将来イクメンになれんぞ」
俺だって、ちょっと思ってたさ
我が家に赤ん坊が……
けど……オムツ替えは必要なかったんだよ!
「ん?どした?」
「……莉玖の弟は受験生らしいよ」
「……は?何言ってんだ?」
「あ!あれか?保育園お受験みたいな……今や、生まれた時から始まってんのか?!」
「お前ら……」
「あ?どした?神谷」
「兄弟の居る奴は誰だ?……兄弟の居る奴は……中川……確かお前、1個下の弟が居たよなぁ?なぁ?」
「ちょっと、何?月川……どうしちゃったの、この人?俺の弟は生まれたてじゃねぇぞ」
「莉玖の弟も、生まれたてじゃなかったって事」
「……はあ?じゃあ、受験生って……」
「高校受験らしいよ」
「ええっ?!お前……だって、今までの話……」
「莉玖自身が勘違いしてて、今頃になって気付いて焦ってんだよ。まあ、本当の兄弟じゃなくても、一緒に暮らすからな。中川、兄弟が上手くやってく秘訣は?」
「あ?秘訣なんてねぇよ。俺の弟は世界一可愛いし、弟は俺に懐いてるからな」
中川からそっと離れる
「……わりぃ。聞く相手間違えたわ。お幸せに。他に兄弟居る奴、教えろ!何したらいいんだ?逆に何したらダメなんだ?!」
「莉玖、落ち着けよ。向こうだって、初めて会う訳だし、普通に友達か後輩みたいな感覚で接してけばいいんじゃねぇの?」
「ああ……そっか。そうだよな?お互い初対面だしな」
「…にしても、受験控えてんのに、学校変わったり、住む場所変わったりって、そいつ大変だな?」
「な?俺なんて、この時期位から、時々イライラしては、家族に当たり散らしてたぞ」
「あ~確かに。夜中勉強しようとして、結局寝ちゃって、だったらベッドでちゃんと寝りゃ良かった!とかな」
「なんか、周りもピリピリしてくるしな?」
「分かる~」
「……そっか……そうだよな……」
詳しい事情は知らないけど、こんな時期に、親戚って言っても会った事もない、他人の家に来なきゃならないって、それだけで大変な事だ……
とりあえず、優しく声かけてやろ
……どんな奴なんだろ……
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