突然目の前に美少女が現れたと思ったら、昔離れ離れになった幼なじみだった件

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「ところでさ、たくみくんって何か部活入ってるの?」 「部活はねえ、入らなかったんだ」 「ええ!? 入ってないの!? 身体動かすの好きだったじゃない!」 「身体動かすのは好きだったけど、それがイコール運動神経じゃかったから……。スポーツ苦手なんだ」 「ええー。あんなに追いかけっこ速かったのにー」  言われてみれば、きぃちゃんと鬼ごっこをしてあまり負けた記憶がない。  僕が鬼だとすぐ捕まえられたし、きぃちゃんが鬼だったらいつまでも逃げ回ることができた。  でも、それは子どもの頃の話だしなぁ……。 「きぃちゃん、いつも泣いたフリして僕を捕まえようとしたよね」 「あはは! そうそう! だってたくみくん、全然捕まらないんだもん! 泣いたフリしたらいつも心配して駆けつけてくれるから、いつもそれで捕まえる瞬間を狙ってたんだ」 「ほんと、ズルかったなあ」  あははは、とお互い笑いあった。  なんだか昔のことを思い出すと、この緊張もほぐれてくるようだった。  やっぱり昔一緒に遊んだ記憶っていうのはすごい。  どんなきぃちゃんが美少女に変貌をとげていたとしても、昔を思い出すと途端に親しみやすくなってくる。 「今なら私、たくみくんを捕まえられるかもね」 「さあ、どうかな」 「なんなら今からやってみようか?」 「無理だと思うよ?」 「そんなことないよ。だって今、こうしてたくみくんを捕まえられたんだもん」 「は?」  そう言うなり、きぃちゃんは僕の腕をガシッと掴んで来た。 「き、きぃちゃん?」 「ねえ、たくみくん。聞いてくれる? 私がこの学校に転校してきた理由」 「転校してきた理由って、お父さんの転勤の都合でしょ?」 「ううん。本当はね、お父さんの職場って家からちょっと遠いの。私のわがままでこの学校にしてもらったの」 「へ?」 「ここにたくみくんがいるって知ったから。だからこの学校に転校してきたんだ」  ち、ちょっと待って。  どゆこと? どゆこと?  僕がいるからこの学校にしたって、それって……。 「私ね、たくみくんのことが……」  その時、チャイムが鳴った。  5限目の始まりの合図だ。 「ヤバ! 行かなきゃ!」  慌ててお弁当をしまうと、僕らは急いで教室に向かった。 「たくみくん」  教室にダッシュで向かう途中、きぃちゃんが声をかけてくる。 「なに?」 「あの……、その……、これからもよろしくね!」 「う、うん!」  気づけばきぃちゃんは僕の腕をつかんだままだった。  でも僕はそれがすごくたまらなく嬉しかった。  これからの学校生活。  不安ばっかりだけどきぃちゃんと一緒なら楽しくなりそうな、そんな予感がした。
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