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「うちの、義弟が作りました……」
「……え」
「だから、壱臣くんが作ってくれたの」
「壱臣くんて、高校生の義弟くん?」
実世は念の為確認するように尋ねて、雲雀は素直にコクリと頷いた。
すると「仲良くやってるじゃん」と安心したように話す実世の隣で、文斗はなんだか複雑な表情をしている。
少し心配していた義弟の存在が、自分にとって徐々に脅威へと変化していたから。
会った事もない高校生に対してこんな不安を抱くこと自体、おかしな話だと承知しているのに。
雲雀とはこのままの関係で充分満足していた文斗を、確実に脅かしていく。
「義理の姉に手作り弁当なんて、健気だねー」
「前日のおかず余ってて、ついでに作ってくれただけ」
「でもそれに時間割いてくれたって考えたら、可愛い義弟じゃん」
「……ま、まあね? ありがたいとは思ってるよ」
口先を尖らせて、満更でもない表情を浮かべる雲雀。
あの日以降、一体どんなふうに接したら良いのかと迷ったけれど、案外壱臣の方は普段通りだった。
そのおかげで無駄に構えることなく、指摘されたことだけ気をつけるようにしている雲雀は、今も問題なく共同生活を送れていて。
最近では、雲雀の方がお世話されていると感じることも増えてきた。
そして思う。やはり壱臣はただの高校生ではなく、何でもできるスーパー高校生なのだと。
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