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遥君のキーマカレーとスプーンをテーブルに置いた。
「いただきます」
元気に手を合わせると、一口食べて顔を綻ばせる。
「すっごく美味しいです」
「そう、良かった」
可愛い子が美味しいと食べてくる事に心が満たされる。いや、本当に可愛い。
「遥君は何学部なの?」
「僕は外国語学部英語学科です」
「俺、学生の時英語苦手だったな」
「僕も得意って訳ではないです。誠さんはどんな仕事されてるんですか?」
名前にさん付けされて心臓を鷲掴まれた。コテンと首を傾けるのも100点満点中5億点はあげたい。
「俺はおもちゃ作る会社で働いてるよ」
「子供に喜ばれる仕事なんて素敵ですね」
「大人が悦ぶおもちゃだから子供には見せられないかな」
目をパチクリさせて、ボンっと音がしそうな程顔を真っ赤にさせる。反応がいちいち初心で可愛すぎる。
「えっ、あ、あの、……誰かが喜ぶ仕事って素敵ですよね!」
慌てて早口でしゃべり、恥ずかしさを誤魔化すようにキーマカレーを頬張る。こうも純粋だと意地悪したくなるな。
「興味あるなら飯食った後にサンプルあげるよ」
ゲホゴホとむせる遥君の背をさすってやり、水を渡した。それを一気に飲み干す。
可哀想なくらい真っ赤になって潤む瞳は、少しの期待を孕んでいるように見えた。興味はあるんだろうな、とこちらも嬉しくなる。
まずは食べきろう。
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