第12話 エリカ

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 アリスは涙を浮かべながら、アレンを振り払おうと必死でもがいた。  どうしてアレンは、自分の気持ちをわかってくれないのだろう。アレンのことが、また嫌いになりそうになった。 「オレの言うことくらい聞いたらどうだ!」  珍しく声を張り上げるアレンに、アリスは同じく激しい口調で言い返した。 「どうしてあんたなんかの言うこと聞かなきゃいけないの!」 「俺は、アリスの兄ちゃんだ。兄ちゃんの言うことは黙って聞け!」  その言葉に、アリスはゆっくりとアレンを見つめた。瞳に映るアレンの姿は、もう幼い頃の兄の姿と重ねることはできなかった。 「……もうお兄ちゃんなんかじゃない。 私たちは兄妹じゃなく、もう他人でしょ……?」  時計の針はとっくに日を跨いでいる。  明日から兄妹ではなくなるアリスとアレンはもう、他人だった。  アレンの手の力が急に弱まった気がした。 「他人の私のことはもうほっといてよ!」  隙をついて、アリスはアレンの腕を強く振り払った。アレンから背を向けて、お城のほうに走り出した。  アリスを引き止めることができなかったアレンとほかのみんなが、暗いムードになる。  徐々に小さくなっていくアリスの背中を見て、クラリスが一人、つぶやく。 「アリス……」 「……僕たちも行こう」  ジャックの言葉に、アレンを残して、みんなはアリスを連れ戻すためお城に向かった。  一人取り残されたアレンは、しばらくその場に立ち尽くしていた。  ただ唇を噛みしめて空を仰ぐことしかできなかった。
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