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アリスは涙を浮かべながら、アレンを振り払おうと必死でもがいた。
どうしてアレンは、自分の気持ちをわかってくれないのだろう。アレンのことが、また嫌いになりそうになった。
「オレの言うことくらい聞いたらどうだ!」
珍しく声を張り上げるアレンに、アリスは同じく激しい口調で言い返した。
「どうしてあんたなんかの言うこと聞かなきゃいけないの!」
「俺は、アリスの兄ちゃんだ。兄ちゃんの言うことは黙って聞け!」
その言葉に、アリスはゆっくりとアレンを見つめた。瞳に映るアレンの姿は、もう幼い頃の兄の姿と重ねることはできなかった。
「……もうお兄ちゃんなんかじゃない。
私たちは兄妹じゃなく、もう他人でしょ……?」
時計の針はとっくに日を跨いでいる。
明日から兄妹ではなくなるアリスとアレンはもう、他人だった。
アレンの手の力が急に弱まった気がした。
「他人の私のことはもうほっといてよ!」
隙をついて、アリスはアレンの腕を強く振り払った。アレンから背を向けて、お城のほうに走り出した。
アリスを引き止めることができなかったアレンとほかのみんなが、暗いムードになる。
徐々に小さくなっていくアリスの背中を見て、クラリスが一人、つぶやく。
「アリス……」
「……僕たちも行こう」
ジャックの言葉に、アレンを残して、みんなはアリスを連れ戻すためお城に向かった。
一人取り残されたアレンは、しばらくその場に立ち尽くしていた。
ただ唇を噛みしめて空を仰ぐことしかできなかった。
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