第4話 四月一日の嘘

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第4話 四月一日の嘘

 四月一日。どんな嘘が許される日。エイプリルフールだ。  僕は学校の制服に身を包んで学校へ向かう。  通学路には桜の木があり、蕾だった花は綺麗な花びらを咲かせていた。時折、冷たい風が吹くと花びらを散らせて、僕の目の前をひらりと舞い降りた。  学校の校門までやってくる。校門から校舎の玄関口まで桜並木ができており、桜は綺麗に咲き誇っていた。  シチュエーションとしては完璧ではないだろうか。本当の告白だと勘違いしてしまいそうになるだろう。  僕はサユがやってくるのが楽しみになり、口元がニヤけそうになるのを堪えた。  しばらくして校門を通り過ぎていく生徒が増えていく。いくつかの下校する集団が通り過ぎていく。  そして、そのうちの一つの集団が通り過ぎる。そこにはサユの姿があり、僕をちらりと見ると集団に混じったまま通り過ぎて行った。  ……いや、待て待て。  僕は脳の処理が追いつかず、ぼけーっと見逃してしまう。昨日のメッセージを忘れたのかと思い、集団を追いかけようとした瞬間にサユが集団から離れてこちらに小走りで駆け寄ってきた。 「ごめん、さよならの挨拶してた」 「お、おう。そうか」  サユはあはは、っと誤魔化すように笑う。いわゆる苦笑いのようなものだった。 「それで、どうしたの?」  サユはそういってもう一歩近づいてくる。やけに声が小さくなり、僕の言葉を聞き逃さないようにしているように思える。……僕の声は自覚できるほどに小さくボソボソ話しているからな。誇るほどでもないが。 「別に大したことじゃない」 「それなら、わざわざどうしたの?」 「言いたいことがあるんだ」  実際に嘘を吐く。その直前になると緊張してしまう。  一瞬黙ってしまい、その間もサユからじっと見つめられたままだった。 「……僕は君のことが好きだ」  見つめられた瞳を見つめ返して、ボソボソと僕は話した。  緊張も一瞬。言い終えてしまえば、彼女のリアクションが楽しみになってくる。  ……そのはずだった。
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