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キッチンは普段あまり使っていないのか、割と綺麗だったが、 少し油汚れのついたIHコンロや電子レンジの中を、ピカピカに磨き上げた。 キッチンの引き出しの中もきちんと整理する。 壮馬の母が買ってきたと思われる調味料類は、 賞味期限の日付け順にきちんと並べた。 使わないのはもったいないのでこれから毎日消費していこうと思う。 その後二時間ほど掃除を続けた結果、 部屋の中は見違えるように綺麗になった。 部屋がピカピカになると、空気まで澄んだような気がするから不思議だ。 正午になると、花純は冷蔵庫の残り物で簡単なパスタを作る。 テレビを見ながらパスタを食べ終えると、すぐに買い物へ行く準備をした。 マンションを出た花純は、高級住宅街の中をのんびりと歩く。 昼間の爽やかな空気が心地よい。 すると突然花純の携帯が鳴った。 電話は母の涼子(りょうこ)からだった。 母の涼子には、火事で焼け出されて上司の家に世話になっていると伝えていた。 その後の連絡をしていなかったので、きっと心配して電話をしてきたのだろう。 「もしもしお母さん?」 「花純? 今大丈夫? 昼休みかなと思って電話したんだけど」 「うん、今日は休みだから大丈夫だよ」 「あらそうなの? それは良かったわ。でね、今いる上司のお宅の住所を教えてもらえないかしら?」 そこで花純は思い出した。 前回母の涼子に電話した時、娘が世話になっているお礼に上司に何か送らなくちゃと母が言っていた事を。 花純は母が壮馬にお礼の贈り物をしてくれるのだと思い、 バッグからメモを取り出して住所を伝えた。
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