新米刑事への布石

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 すると、佳苗は表情を一変させ、田所刑事を睨みつけた。 「横恋慕 となりの彼女は なに思う。犯行二日前の昼休みに流された川柳です。横恋慕、つまり、早峰さんが丸山秀樹くんをあなたから奪った。いわゆる三角関係ね。そして、となりの彼女とは、木村さんのこと。あなた方は同じ小学校に通っており、家もお隣どうしだった。だから、となりの彼女ってわけね。つまり、早峰さんは木村佳苗さんに劣等感があった。勉強ができても、友だちは少なかった。木村さんのように周りに、親しい友人や恋人もできず、孤独を抱えていた。だから、丸山秀樹くんが早峰さんに靡いたことで溜飲が下がったのでしょう。あの川柳は、木村さんに対する勝利宣言だったのでしょうね」 「わたしが早峰さんを殺したと言いたいんですか?」  木村佳苗は憤慨して立ち上がった。 「いえ。可能性があるということです」 「凶器には指紋がなかったし、これってわたしが犯行現場に近いからという理由からですよね。だったら、保健師の松田先生だって条件は同じです」  すかさず、木村佳苗は反撃に出てきた。田所刑事もコトリも顔を見合わせる。 「あなたには動機があります。そしてアリバイはありません。よって、導き出される結論としては、木村さん、あなたが一番クロに近いのです」 「なによ、なによ。あんな川柳如きで、わたしが早峰さんをやったとでも言うつもり?日本の刑事も大したことないわね」  佳苗はせせら笑った。 「じゃあ、目撃者に出てきてもらいましょうか。山岡くん、入っていいわよ」  田所刑事が声をかけると、ドアが静かに開いた。 「放送部の部屋から飛び出した生徒は、彼女に間違いない?」  田所刑事が傍に寄って、山岡くんに訊いた。  山岡悟は木村佳苗をじっと見つめながら、強く頷いた。
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