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「なんだか嫌な内容の歌詞……」
「うん、気持ちのいい歌詞ではないね」
ハルは同意してから、「それとね」と続けた。
「僕も驚いたのだけれど、歌に出てくる座敷牢は、隣の家にあったものらしい」
咲希たちの新しい住まいの隣は、空き家になっている古い民家だ。かごめかごめの歌詞に出てくる籠、つまり座敷牢は、隣の民家に設けられていたものとのこと。
「かごめかごめの歌は、隣の家が発祥地なんだ。本当に驚いた」
だが、さすがにそれは信じられなかった。
「嘘ばっかり」
咲希が断言してみせると、ハルは切れ長の目を、さらに細めて微笑んだ。
「バレたか。ほら、今日はエイプリルフールだからさ。嘘をついてみようと思って」
「あ、そっか、今日は四月一日だね」
「うん、エイプリルフールだよ」
「すっかり忘れてた」
「でも、あれだね、エイプリルフールの嘘は楽しいけれど、僕たちの嘘は苦しくて悲しいね」
「ん? どういう意味?」
しかし、ハルはそれに答えず、「ところで」と話を変えた。
「かごめかごめに出てくる女の人は、なぜ座敷牢に閉じこめられたと思う?」
「さあ……」と咲希は首を傾げた。「どうして?」
「女の人だったのに、女の人を愛したから」
「え……」
「座敷牢は主に精神に問題のある人を閉じこめるもの。昔のことだからだ、同性愛者を精神異常者とみなしたみたいだね」
ハルはなんでもなさそうに言ったが、咲希には含みがあるように聞こえた。
さらにハルはこうも言った。
「そういえば、由乃さんは元気にしてる?」
由乃は咲希の幼馴染なのだが、なぜここでその名前をだしたのか。それも意図的のように感じた。
――女の人だったのに、女の人を愛したから。
もしかしたらハルは気づいているのかもしれない。咲希の普通ではない部分を。
だが、気づいているという確証もないのだから、悟られていない体で応じておくべきだ。
「うん、元気にしてるよ」
そう伝えながら咲希は思った。
やっぱりハルと由乃はよく似ている。ふたりとも色が白くて小柄で、どことなく儚い印象がある。
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