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そこで、タクシーを見つけようとしたが、時間帯が悪かったのか一台も無かった。
「どこまで移動するのだ?」
有島は通常社会で部屋を借りていて、普通の暮らしを偽装しているらしい。
「私の家、食べ物が無いので買ってきます」
「今、食べただろう?」
有島は、自分がマークされている事に気付いていて、俺を置いて一人でコンビニに入った。
「有島!!キャリーバックに入れるな!!!ベンチに置き去りにするな!!」
キャリーバックに入れられているというのが、屈辱的だ。そして、当たり前のように、黒いミニバンがコンビニの駐車場に入ると、俺を持ち上げて積み込んでいた。
「こら、持ち上げるな!」
「静かにしろ!」
有島はキャリーバックの鍵をしっかりと掛けていた。だから、俺は外に出られない。だが、逆に外からも俺に触れる事ができない。
「あれ??言葉が聞こえたような……」
「どこかにマイクがあるのか?」
男は俺のキャリーバックをクルクルと回し、付いていた盗聴器などを外して、他の車に投げていた。
「回すな!落とすな!」
「……落としていません。どこにマイクがある???」
これは、マイクではなく肉声だ。
「男の方は?」
「サルを取ったと言ったら、素直に付いてきました」
車でやってきた男達は三人で、一人はずっと運転席で待機していた。そして、車に動物を乗せる事が嫌なのか、俺を見て舌打ちしていた。
そして、体格の良い男が、コンビニから有島を連れて来ると、後部座席に乗せた。
そもそも、大切なサルだったならば、ベンチに置き去りにしない。それが分かっていない所で、このメンバーは誘拐には向いていない。それに、証拠を残し過ぎている。
「こいつで間違いないですね。ほら、賞金が掛かっている顔と同じだ」
「そうだな」
どうも、有島には賞金が掛けられ、多分、複数の誘拐犯が狙っていた。そして、この三人が動いたのは、プロではないからだ。賞金につられて動いているので、防犯カメラにもバッチリ映ってしまっている。
「誘拐?」
「俺達は、誘拐していない。頼まれて、送迎するだけだ」
頼まれた行為でも、犯罪は犯罪だ。こういう連中は、それが分かっていない。そして、後部座席に乗り込んだ若い男は、サルと会話してしまったと、悩んでいた。
「サルと人生相談も出来るぞ」
「嫌だ!!」
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