社会の窓

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 コンビニで買い物をしていたら、店内にいた小学生くらいの男の子が、驚いたような目で俺を見ていた。  子供にそんな顔をされる理由が判らず戸惑っていたのだが、しばらくその子を窺っていたら、視線が、俺の股間に向いていることに気がついた。  あ。さっきコンビニに入ってすぐ、トイレに駆け込んだのだが、その時ファスナーを上げ忘れていた。  確かに恰好側いけれど、ちょっとファスナーを上げ忘れたくらいで、そんなに驚いた顔をしなくてもいいんじゃないか?  そんなことを考えながらファスナーを上げようとした時、冷蔵コーナーのガラスに自分の姿が映った。  開いたファスナーの奥に広がる、宇宙空間のような光景。一応断っておくが、これ下着の柄じゃない。その証拠に、その空間では何かが絶えず動いているのだ。は  下がったファスナーの中にこんな景色が見えたりしたら、そりゃああんな顔にもなるだろうよ。  もう一度トイレに飛び込み、ズボンを下ろして内部を確認する。けれどそこにはもう宇宙空間はなく、ただ、普通に下着を穿いているだけの下半身が存在していた。  さっきのあれは何だったのだろう。俺の大事な部分が宇宙空間になり、そこに何かがいる…二度とあんなものは見たくないから、これからはトイレの後、ファスナーの上げ忘れは絶対しないようにしよう。 社会の窓…完
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