スキャットマンレディウォーク

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スキャットマンレディウォーク

見知らぬ路地裏をスキャットマンレディは練り歩いていた。 勘違いしないで欲しい。 スキャットマンレディは一人である。 しかしまごう事なく練り歩いていたのである。 見たこともない路地裏をヒタリヒタリと闊歩する。 スキャットな衣装に身を包み、誰しもが振り返る出で立ちで生い立ちを隠しながらも、隠しきれぬ眼光の奥にキラリギラリと光るものがある。     しかして何かを感じ取ったレディは一瞬眉を顰めすぐさま走り出した、そう、微かに助けを呼ぶ声が聞こえたのだ! 「いやぁ!はなして!」 「うるさい!おとなしくついてこい!」 はたして路地裏の更に路地裏にはうら若き乙女とむさ苦しい男が争っていた。 「おいおい、何してる?ここは天下の路地裏だぞい?」 「はぁ?うるせぇだま……げ」 男は振り返りざまにレディを見て二の句を継げずに変な顔を更に捻じ曲げた。 「まて、こいつはな、借金があってな、それを踏み倒そうって言うんだからこいつのほうが悪いわけで……」 男は途中から説明を諦めた。 なぜならスキャットマンレディのスキャットが今にもレディしようとしていたからである! 「うぉい!人の話を……」 「私が!」 「お、おぉう」 「人の!」 言葉を発しながらレディはジリジリと男に詰め寄っている。 「はあ」 「話を!」 「うん」 「聞いた」 「おう」 「事が!」 「うんぐ」 「あるかぁああああ!」 「うわぁああああ!」 男は走り去った、まるであの頃に忘れた子供の無邪気さの様に……。 「あ、ありがとう」 「どういたしまして」 スキャットマンレディはそう言うとくるりと踵を返しまたもと来た路地裏へとヒタリヒタリと練り歩いていった。 そう、彼女にとって善悪は関係なかった。 いや、世界にとってもそうだったのかも知れない。
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