巫女と幼馴染の恋

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──神様の巫女とそのお世話役、わたし、新野姫子と荒木亮はそんな関係の幼馴染だった。この村では神の巫女は生涯誰とも結ばれてはならないという掟があった。 わたしは神社の境内にある巫女が住むために作られた八畳くらいの部屋でほとんどの時間を過ごしている。巫女として選ばれた者は十五歳になると、こうして神様のお傍にと境内で過ごすことになる。 ──本当に退屈で、孤独で、いるかどうかも分からない神様はわたしの心を埋めてくれない。 そう思ったのは丁度、夕食の時間。 「お食事をお持ちしました」 部屋に食事を持って入って来たお世話役の姿を見て、憂鬱な気持ちは吹き飛んだ。 彼は神主のような姿をしたわたしと同じ十五の青年だ。 「ありがとうございます。そこに置いて下がっていいですよ」 「はい、ごゆっくり」 そう言って、部屋を出て行くお世話役の彼をじっと見つめて頭に焼き付ける。 焼き付けた記憶の中の彼を思い浮かべながら、一人で食事を食べる。 静かだ、巫女姿のわたしが食事をする箸の音がするくらい。 わたしは記憶の中の彼に話しかける。 ──待って、昔みたいに一緒に食べようよ。 ──待って、わたし話したいこといっぱいあるの昔みたいに話そう。 ──待って、いかないで、そんな改まった言葉いらないよ、ねえ寂しいよ・・・・。
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