姉妹の日々

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都会に憧れるのは、当然のことだった。その頃、村の若者たちはこぞって都会へ行き、見たこともないようなものを買ってきたり、驚くぐらいのお金を持ち帰ったりしていた。()()へ行けば人生が変わると、まるで新手の宗教のように勧誘し、ある者は農具を売り、またある者は家財を勝手に売って、旅費を工面していた。そのまま帰らぬ人も多くいた。結果、村の人口は少しずつ減少し、大人たちは(しき)りに会合を開いては、何とか若者の流出を止めようとしていた。 花枝もおそらく逃げたかったのだ。自らに課せられたお役目と、若く、(はつ)(らつ)とした肉体(からだ)の狭間で苦しんでいたのだ。(ゆえ)に常に私の近くにあって、僅かばかりの安心感を得ようとしていた。私などにうら若い娘を守ることはできないのに、彼女は(まい)(まい)逃げ込める隠れ家と()()したように、私の傍を離れなかった。   二人で、色々な遊びをした。いや、二人でしか遊ばなかった。私にも花枝にも、それぞれに友人はいたのだが、二人が二人であることを誓いとして立てており、他の者を寄せ付けない特殊な棘を持っていた。どこへ行くにも手を繋ぎ、どこにでも座り込んでは会話や遊びに興じた。 不思議なことに、話の種は泉が()()ずるように湧いてきた。ほんの小さな冗談が、二日も三日も語らうほどの大難題になったこともあった。 私たちは姉妹でありながら、または夫婦であり、あるいは共犯者的な結びつきであった。()く言う私も、花枝といることで縮小された世界を(しょう)(がん)する気持ちだった。そのぐらいに、二人は二人として、隔絶された円を作り、強力な磁力をもって、互いを惹きつけていた。
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