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日曜日、時刻は午後4時。
「伊吹。いい加減、部屋を片付けろ」
またうるさい兄が勝手に部屋に入ってきた。
守りたいプライバシーなんてお構いなく、
人の領域にズカズカと踏み入れるこいつが
僕は昔から大嫌いだった。
「うるさいなあ。後でやるよ」
ベッドに横たわったまま漫画を読んでいたら
「今やれ」
と兄に容赦なく漫画を取り上げられる。
「なんだよ、お前に関係ないだろ」
「関係あるよ。俺が母さんに怒られる」
兄は漫画を机に放り投げると僕を睨みつけ、
部屋の入口に立てかけていた掃除機を
押しつけてきた。
「またベッドの上でお菓子食ったのか。
シーツにカスがつきまくってるじゃん」
「もう!ホントうるさいよ、僕の勝手だし」
兄は潔癖な性質で、部屋にチリひとつない。
勉強ができて、背も高く顔立ちもいいが、
こんなに口うるさいとオンナにモテないぞ。
ベッドシーツが引き剥がされると同時に、
床にお菓子のカスがバラバラと散乱する。
「あ、そうそう。衣織が来るってさ」
「‥‥それを早く言え」
高鳴る胸の音を自覚しながら、
僕は慌てて掃除機のスイッチを入れた。
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