一日一殺

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一日一殺

…………………………………………………… 「善人はなかなかいない」     ~フラナリー・オコナー~ 恨み、妬み、嫉み、怒り、恐怖、義務、欲、女、男、快楽、猟奇、 今日も何かの理由で、いや理由がなくても 誰かが誰かを殺している。 …………………………………………………… 母親と娘が慎ましく暮らしていた。 父親は娘が幼い頃蒸発した。 母親は娘を可愛がっていた。 娘のために必死に働いた。 しかし母親は病気がちで娘が17歳の時に入院した。 「お金のことは心配しなくていいのよ」 母親は娘に対してよく言った。 そして18歳の時に病死した。 葬式を済ませてしばらくすると 蒸発した父親が現れた。 父親はカネにだらしなく、毒親を絵に描いたような男だった。 父親はある紙を渡して見せた。 紙は契約書で、 娘のサインがしてあった。 確かに娘の筆跡だった。 こんな契約書にサインした憶えはもちろんない。 しかし混乱する頭の中で娘は思い出した。 母親から、クレジットカードを作るとかいって、 サインをした事を思い出した。 「あなたも、もうオトナだから」 と母親は言った。 「明日、撮影だ」 父親は言った。 契約書は【AV出演】の契約だった。 後見人のサインは母親だった。 「金の心配はしなくてよくなるな」 父親は言った。 娘は撮影当日に姿を消した。 数ヶ月経って、東京湾で女性の水死体が発見された。 しかし、損傷が激しく、失踪した娘かどうかは 分からない。 …………………………………………………… 一日一殺、終。
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