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暫く走り続けた僕は、歩道の縁石に躓いて転んだ。膝に痛みが走り、擦り剝いた所から血が滲んでいた。
「君、大丈夫か?」
たまたますぐ近くで信号待ちをしていた車の窓が開き、声をかけられた。
心配してくれたのは分かってる。
でも、僕を『君』と呼ぶ、僕を知らない人と喋る気にはなれず、痛む膝をギュッと掴むと立ち上がり、また走り出した。
そのうち膝がジンジンとしてきて、僕は走るのをやめて、トボトボと歩いた。
俯いていた顔を何気なく上げると、商店街の本屋のおじさんと目が合った。
おじさんは、横断歩道を車を停めて渡してくれたり、校門までついて来てくれる、僕らの登下校を見守るスクールガードだ。
店のシャッターを開けて開店の準備をしていたみたいだ。
おじさんが僕の方へ近付いて来た。
ニコニコといつもの笑顔を浮かべて……
おじさんなら、僕を知ってるはず!
期待につい笑顔になる。
「君、七倉小の子かい? 何でこんな時間にこんな所にいるの? 今は学校の時間だろ?」
僕の笑顔が一瞬にして引き攣り、また瞼の裏が熱くなる。
このおじさんも僕を知らないと言う。
「健太くん、おはよう」って笑ってくれてたじゃないか!
どうして?! どうして!!
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