14人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「君、落ち着いて。三谷健太くんと言ったね? 今、教頭先生が調べてるから」
でも、宮田先生が視線を向けた先の教頭先生は、深刻な顔で首を横に振った。
「宮田先生は『君』なんて言わない! いつも僕の事を『健太』って呼んでくれたのに!」
僕の目線まで膝を落とし、両手を握る宮田先生と、後ろから僕の肩を宥めるように摩ってくれる桜木先生の手を、僕は乱暴に振り払う。
「教頭先生も、松尾先生も、加藤先生も、他にも知ってる先生いるのに! 何で僕の事、みんな知らないって言うんだよ! 嫌だ! もう嫌だ!」
僕は泣きながらそう喚くと、職員室を飛び出した。
宮田先生や前に担任だった松尾先生が、何か言いながら追いかけて来たが、僕は振り返らずに校庭を突っ切り、必死に走る。
どんどん溢れて来る涙が、風に流れる。
しゃくりあげるせいで、呼吸が乱れ、苦しくなる。
それでも、“僕を、誰も知らない世界”から、遠く逃れたかった。
最初のコメントを投稿しよう!