独白、どくをはく。

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──この世に意味が無いものがあるのだろうか。 散る花ひとつにしても実をつけ新たな芽を成すためであり、虚に霧として果てるものではない。ところが高慢な人間たちは自己の都合で生きとし生けるものを意味なく躙る。それは命だけに限った話ではない。躙られるものにはこころも含まれる。頸を締め上げ呼吸を支配するように、じわりじわりと搾り取っていく。俺よりも聡明な君は『なにを』なんて野暮なことを聞きはしないだろう。 性善説が心に根ざした者は『他者を躙るのも、他者から奪うのも悪だ』と即答しているからだ。答えを欲する時点で解は己が内にある。君は俺に尋ねることで『自らの持つ解と照らし合わせ、それが異なることを確認したい』だけであるのだから。 『答えが偽であれば、自分は他者から何も取り上げていない』ことへの証左になるわけだ。 ああ、忘れるなよ。俺とて何も奪わず今のいままでのうのうと生きていたわけではない。俺も他者から奪っている、否、日々奪い合いとでも言うべきか。無駄に歳を食ってきたわけじゃあないさ。たまにはこんな世迷い言も吐く。 今日もまた、客人が来たようだ。 話はここまでにしよう。 「──ここが、噂のご神木……」 君に迷えることがあれば、 すべてを搾り取ってあげよう。 あまねく事象に『神の采配』という意味をつけるために。
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