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「……そうだ、ああ。子供から親の順に消すことだけ忘れるな。しくじるなよ」
いや怖っ。
なに、これ。どうなってるの。
うちの父の仕事って、殺し屋とかそういうこと?
漫画の世界みたいな出来事が、今まさにここで起こっている。
――すると、不意に書斎のドアが引かれ、もたれていた私はそのまま後ろに転がった。そして仰向けの状態に倒れた私は、覗き込んでくる父と目が合う。
「……お前、まさか今の話、聞いてたのか?」
「え!? いや、ううん、聞いてないよ!!!」
「ほう。じゃあ、どんな話を聞いてないんだ?」
「いや、あの、殺すなら子供からとか、そんな話聞いてないよ!!!」
「聞いてるじゃないか」
父はふうと嘆息を漏らすと、呆れたように発する。
「エイプリルフールだから大目に見るが、嘘はいかんぞ」
「……はい」
「それにな、さっきの話は、プログラムの話だからな?」
私は父に手を引かれて起き上がりながら、キョトンとする。
「ぷろぐらむ?」
「ああ。機械を動かしている仕組みだ。その中でも大きなプログラムを『親』、そこから枝分かれした小さなプログラムを『子』って言い方をすることがある」
父なりに、子殺し親殺しという疑惑をかけられるのは嫌だったらしく、それぞれについて解説を始めた。私のレベルに合わせてかなり抽象的に話しているだろうことは分かる。ひとまず黙って聞いた。
「――それでプログラムを止めなきゃいけない場合に、親プログラムだけを止めると、子プログラムが宙ぶらりんになることがある。だから子プログラムから先に止めるんだ、という話をしていたんだ」
そんな話だったけ。もっと怖かったような……。
私は単刀直入に切り返す。
「殺すって言ってたじゃん」
「そうか……。あのな、プログラムを強制的に止めることを、俗に『殺す』とか『キル』とか言うんだ。言われてみりゃあ、ぶっそうな表現だな」
父は豪快に笑った。
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