第一章:依存と自立の狭間で

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第一章:依存と自立の狭間で

夕暮れ時の公園を一人で歩く美咲は、思い出に浸っていた。兄、正記がいなければ、自分はどうなっていたのだろうと。正記はいつも彼女のそばにいて、どんな時も守ってくれた。だが、最近になって美咲は変わり始めた。自分の足で立つことの重要性を、痛感していたのだ。 「美咲、大丈夫か?」 突然の声に振り返ると、そこには心配そうにこちらを見つめる正記の姿があった。 「ああ、ごめんね、ちょっと考え事をしていたの。」 美咲は笑顔で答えたが、その笑顔はどこかぎこちないものだった。 公園のベンチに二人で座りながら、正記は妹の様子が最近おかしいことに気が付いていた。彼女はもっと自立したいと感じているのではないかと、兄としては心配もあったが、どこか誇らしい気持ちもあった。 「美咲、もし何かあったら、いつでも言ってくれよ。俺はお前の兄だからな。」 正記の言葉に、美咲は心からの感謝を感じつつも、少し窮屈さを感じてしまう。自分が自立することによって、この大切な兄との関係が変わってしまうのではないかという恐れもあった。 「ありがとう、正記。でも、私、自分で何かを成し遂げたいの。あなたに頼るのもいいけれど、自分の力でも生きていきたいんだ。」 正記は少し驚いたが、すぐに妹の強い意志を理解し、支持することを決めた。 「そうか、美咲がそう思うなら、俺は全力で支えるよ。ただ、無理はしないでくれ。」 その夜、二人はこれまで話したことのないような深い話を交わした。お互いの夢や希望、恐れや不安を打ち明け合いながら、二人の絆は一層深まっていった。 第一章の終わりに、美咲は新たな決意を固めていた。自分の道を歩むと決めた彼女は、兄との関係を大切にしながらも、自分自身の人生を切り開く勇気を持つことにした。兄としての正記も、彼女の決意を支える準備ができていた。 これは、依存と自立、そして愛と成長が交差する物語の始まりだった。
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