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「……別の方法を、考えます。なので、どうかこのことはお忘れになってくださいませ」
頭を下げたまま、そう続ける。それから立ち上がり、フランチェスカが応接間を出て行こうとしたときだった。
ふと、「フランチェスカ」と名前を呼ばれた。その声は間違いなくライモンドのものであり、そちらに視線を向ける。
彼は立ち上がり、大股でフランチェスカのほうに近づいてくる。
「俺も、最近疲弊しているんだ」
「……は?」
でも、彼は一体なにを言っているのだろうか?
頭上に疑問符を浮かべていれば、ライモンドがフランチェスカのすぐ後ろに立つ。
彼が手を伸ばして、フランチェスカの髪の毛に触れた。優しい触れ方。アルバーノとは、全然違う。
「俺も、結婚適齢期だからな。……最近、たくさんの見合い話が来ているんだ」
彼はそう言っているが、その言葉の真意がわからない。きょとんとしていれば、彼の手がフランチェスカの肩に移動する。
自然と、ぴくりと身体が跳ねた。
「だから、その提案は俺にもメリットがある。……まぁ、いわば女避けだな」
こんなことを言うということは、彼には結婚願望というものが本当にないのかもしれない。そう思い、フランチェスカは身体ごと彼のほうに振り返る。
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