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世界ははじめ、大きな画用紙一枚でした。
天使が用意した真っ白な画用紙に、神様が絵を描いていくのです。
神様はまずは大地と海を描きました。
大地には草木を描いて、海には波を描きました。
白い紙に黒い線で細かく描き込んだ、緻密な世界になりました。
神様は天使に聞きました。
「この絵に足りないものは何か?」
天使は答えました。
「立体感です」
神様は影を描き足しました。
すると絵は立体的になり存在感が出ました。
神様は天使に聞きました。
「この絵に足りないものは何か?」
天使は答えました。
「動くものです」
神様は生き物を描くことにしました。
その中には人間もいました。
生き物たちは意思を持って、絵の中を動いています。
また神様は天使に聞きました。
「この絵に足りないものは何か?」
天使は答えました。
「色がありません」
神様は色を塗りました。
世界はとても色鮮やかになりました。
さらに神様は天使に聞きました。
「この絵に足りないものは何か?」
天使は答えました。
「音がありません」
神様は画用紙に息を吹きかけました。
すると世界に風が吹き、動くものから音が出るようになりました。
木々の掠れる音、生き物たちの鳴き声。
世界は賑やかになりました。
そして神様は天使に聞きました。
「この絵に足りないものは何か?」
天使は答えました。
「完成でよろしいのではないでしょうか」
神様は満足して、これで絵を完成としました。
しかしその時、絵の中の住人がポツリと呟きました。
「なんか、毎日同じことの繰り返しだね」
それを聞いた神様は時間が流れるようにしました。
するとどうでしょう。
人も動物も年をとるようになって、最後には皆死んでしまいました。
その様子を見た神様は思いました。
「ああ、この世界は失敗だ」
そう言って画用紙をクシャクシャに丸めて捨ててしまいました。
そして新しい真っ白な画用紙を天使に用意させて言いました。
「さあ、次の世界を作ろうか」
丸められた画用紙が足元にたくさん転がっている中で、神様と天使はまた世界を新しく作っていくのでした。
終わり
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