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「楽ちんパックでも、ここまではねぇ」
「頼めば全部してくれたみたいだけどな。細々としたものは自分達でいいよな」
「そうね。午後、あっちで荷解きもこれが一番ね」
夫の光一と私、由恵。
交際期間2年、結婚2年目。33歳同い年夫婦。
この度、少し広い部屋へ引越しすることになりました。県内だけれども、県の中心を挟んで南から北へ、2時間弱の距離での引越し。
早朝から自分達で荷造りしているのは、今朝まで使った、引越し先でも一番に使うであろう、細々とした日用品だ。
他の物はもうすぐ来る引越し屋さんの楽ちんパックで梱包してくれる。
午後には開梱作業をし…ゴトッ…ン…
「ぁあっ…」
「キャッ…うっそ…嘘でしょ…あなたっ…落としたの?」
「ごめん…落ちた」
落ちた?
楽ちんパックでもいつも以上に忙しくしていた疲れからか、私はその夫の言葉にカチンときた。
「足がある物でもないし…勝手には落ちないわよね?」
自分でも冷たい声だと思った。けど、大切なそれに真新しい亀裂が走っているのを見て取って平常心でいられるはずがないのよ。
「なんだ…その言い方。えらくトゲがあるよな」
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