8.今世-夏野菜のキーマカレー

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 巨大ビジョンの前には人だかりができている。その中に渚は立っていた。隣に立つ長身の男は黒いキャップとサングラスで変装をしていて、一見誰かわからないが、異様に整った鼻筋と抜群のスタイルが目立つ。  神庭と直接会うのはひと月ぶりだった。 「……渚のスープ、何度か飲んだよ」  静かに神庭は口を開く。 「ありがとう」 「特に夏野菜のキーマカレーが旨かった」 「……それ、スープじゃないじゃん」 「だな」  くく、と笑う神庭の声が心地よく、渚はもっと声が聞こえるように体を近づけた。  ビジョンの画面が切り替わり、グループ名が表示される。周りで歓声が上がった。 「お」  隣の神庭は短く、嬉しそうな声を上げた。  いよいよ解禁だ。天文台で撮影された新曲のMⅤ、最初のカットは闇夜に浮かぶ北極星だった。その下を、はくちょう座とわし座が悠々と飛んでいた。
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