48人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
巨大ビジョンの前には人だかりができている。その中に渚は立っていた。隣に立つ長身の男は黒いキャップとサングラスで変装をしていて、一見誰かわからないが、異様に整った鼻筋と抜群のスタイルが目立つ。
神庭と直接会うのはひと月ぶりだった。
「……渚のスープ、何度か飲んだよ」
静かに神庭は口を開く。
「ありがとう」
「特に夏野菜のキーマカレーが旨かった」
「……それ、スープじゃないじゃん」
「だな」
くく、と笑う神庭の声が心地よく、渚はもっと声が聞こえるように体を近づけた。
ビジョンの画面が切り替わり、グループ名が表示される。周りで歓声が上がった。
「お」
隣の神庭は短く、嬉しそうな声を上げた。
いよいよ解禁だ。天文台で撮影された新曲のMⅤ、最初のカットは闇夜に浮かぶ北極星だった。その下を、はくちょう座とわし座が悠々と飛んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!