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「ほ~ん? 今のところ何もないな」
リビングでノートパソコンを起動しながら部屋の中を見回す。特に変化はない。
壁が臓物のように蠢いていたり、窓の外が虹色の謎空間になっていたり、はたまた玄関のドアを誰かがずっとノックしていたりといった怪奇現象は起こっていない。
「なんだ、つまらん。結局いつも通り、『何も起こりませんでした』か」
言い忘れていたが、俺の仕事はミステリーライターだ。推理の方ではなく、怪奇現象の方の。
得意分野は都市伝説。中でも事故物件や「いわくつきの物件」巡りの記事では一定の評価を得ていると自負している。
俺のポリシーは、とにかく現地で取材することだ。それが高じて、事故物件やいわくつき物件に住んでみる、なんて企画をやってたりもする。
今回の引っ越しもその一環な訳だ。
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