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ただ、眺めることしか出来ないを編集
「内見」という言葉の起源は、古代中国の故事にあるという。
越(今のベトナム)の王・内見が、和睦の為に敵国から嫁いできた妃に自ら宮殿を案内し警戒心を解いた、というエピソードに由来する。
――もちろん、これは嘘である。
実際には「内部見学」の略であり、「内覧」とほぼ同じ意味を持つ。
ようは、不動産を買ったり借りたりする前の下見である。
「あの……お客様?」
「失礼。少し考え事をしていました」
そう。今、俺はその内見の真っ最中だった。不動産屋の担当者が必死に繰り広げる営業トークがあまりにも退屈だったので、くだらない妄想をして気を紛らわせていたのだが、どうやら没頭し過ぎていたらしい。
そっと窓ガラスの方に目をやると、薄ら笑いを浮かべたやべー中年男がうっすらと映っていた。我ながら「この顔に、ピンときたら110」というキャッチコピーが似合いそうな人相だ。
それはさておき。
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