陰謀論少年

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「いや、ほんとなんだって! マジで俺、ヤツらに連れさられるかもしれない……」 「おまえレベルが監視対象なら、『ムー』編集部や都市伝説系配信者なんて全員消されてるよ」  この時は、わたしもそうでしたし、クラス全員がいつものホラ吹きだと思っていました。  ところが、それからほどなくしてのこと……。 「……あ、庵野くんだ」  学校からの帰り道、ふと前方に目を向けてみると、10mほど先を庵野くんらしき男の子が歩いていました。  まあ、家のある方向は一緒だし、だいたい通学路も同じなので、偶然、時間帯が重なるなんてことも当然あるでしょう。 「……え?」  ですが、次の瞬間、わたしの目の中に違和感のあるものが飛びこんできました。  橙色(オレンジ)の夕陽に染められた人気(ひとけ)のない住宅街、等間隔に並べられた電信柱の一本の影に、黒いシルエットの男が二人、ひっそりと隠れるようにして立っていたのです。  冬でもないのに黒いトレンチコートをびっちりと着込み、パンツも黒で黒いソフト帽をかぶると、真っ黒なサングラスまでしています。  顔は頬のこけた長身痩せ型タイプで、服装のせいなのかもしれませんが、双子かと思うくらい二人ともよく似ています。  その男達は微動だにせず、前を行く庵野くんの方をじっと見つめているような感じです。  わたしは思わず足を止め、しばらくその場に立ち尽くしてしまいましたが、その間にも庵野くんはずんずんと遠ざかってゆき、すると男達も電信柱の影からて、静かにその後を追って歩いてゆきます。  庵野くんの歩調に合わせ、それ以上近づくことも、また逆に離れることもなく、まるで尾行をしているかのような様子です。
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