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第八話 お兄ちゃん、大好きだよ
麻衣の遺書は、母親が保管している。彼女のために用意された仏壇。その引き出しの中に、しまわれている。
悲しい言葉が記された遺書。読むだけで辛くなるから、読み返すことなどない。彼女の形見の一つだから残しているだけ。
『大好きで、結婚したいと思ってた人に捨てられました。彼も、将来は結婚しようって言ってくれてたのに。ずっと悩んでたけど、もう生きいていたくないです』
殴り書きの、麻衣の遺書。
読み返すことなどないから、誰にも気付かれない。
その後に、本来の彼女らしい綺麗な文字で、付け加えられた。
『私こそごめんね、お兄ちゃん。大好きだよ』
(終)
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