うれしいお引っ越し

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 私は茶色いガサガサした家にいる。人間の言葉では確か『段ボール』とかいうものらしい。  ううん、捨てられたわけじゃないの。でもいつだったか、彼が私を見つけてくれた。  そしてここはノラの私のために、彼が作ってくれた家。下には『タオル』とかいうものを敷いてくれている。  でも、彼は今日はまだ来ていない。いつもならもう来ている頃なのにな。  私のこと、嫌いになっちゃったのかなあ……。 「メルー」 「! にゃーん」  彼だ!  私が彼に向かって声をあげると、彼は駆け寄って私の頭を撫でてくれる。私は彼の手に頭をすりすり。 「ごめんね、遅くなって! パパとママにお願いしてたんだよ!」  お願いって? 「さあお引っ越しだよ、メル。今日からぼくたち一緒に暮らせるんだよ」  本当に? 本当に一緒に暮らせるの?  彼が優しく微笑んで段ボールごと私を抱き上げて立つ。 「さあ、帰ろうね。ぼくたちのお家へ」 「にゃーん」  今日はうれしいお引っ越し。大好きな彼の家へとお引っ越し。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!