彗星とオルゴール

「もうすぐ彗星が地球に到達するんだって」
　みんなが噂をしている。この頃、連日のように報道されているニュースの話。
　このままでは約一週間以内に、彗星が地球に最接近するらしい。
　しかもその彗星が地球をかすめた場合、地球が破壊されてしまう恐れがある。世界の国々が彗星を撃つ準備を進めているものの、はっきり言って無意味だと専門家は話している。人間の決断よりも彗星の無意識のほうが明らかに速いからだ。
「ねぇそれ、本当だと思う？」
　聞いたらアカネは、
「本当だと思う。あー、クリスマスフラペチーノ飲みたかったなぁ」
　と言って、オルゴールを鳴らした。

　私たちが属する文芸部は、創立以来続いている老舗中の老舗クラブである。ただ現在、部員は私とアカネしかいない。先輩たちは一学期で去っていき、新入部員は入らなかった。三人に満たないため、おそらく来年度の部活動継続については、審議が入ることだろう。
　活動らしき活動も、していない。週一回木曜日、昭和な洋館風の校舎にある部室にこもって、お菓子をつまみながら雑談するだけ。でもなぜかどっちも来なくなる、ということはなく、毎週部室は開放されて、なんとなくいつまでも続いていた。