No.0

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真夜中の住宅街、其れはふっと現れた。 「あの…すみません」 振り向くと少女が一人。雨が降りしぐ。アスファルトに跳ね返り、傘を持たない少女を濡らした。 「…銀の鈴を付けた黒猫を知りませんか、捜しているんです」 少女は僕に詰め寄って、切に…尋ねる。そう云った少女自身、首には銀色の鈴を付け、真黒なフリルとレース、リボンがふんだんにあしらわれたドレスを着ていた。 「…耳と、尻尾があれば完璧」 「え?」 少女はきょとんと聞き返す。ああ、口に出していたのか。雨の中、少女によく似合う雨の中、僕は嗤った。 「普通はもう少し、丁寧な嘘を吐くものですよ…?」 少女は僕の笑みに何を感じ取ったのか、後退る。まったく…最近の黒猫は、こうもあからさまに動く様になったのか…。と、少しだけ落胆した。 「なに…云って…」 「だから、さ、あれ」 僕は路上に違反駐車してある車のサイドミラーを指差す。少女はくるりと振り向いてミラーを確認した。一緒にドレスが軽やかに舞う。サイドミラーには、 「───…あ」 白い指先に掴まれた、銀色のナイフが写りこんでいた。 銀は月明かりをよく反射する。 「たかが猫一匹捜すのにナイフは必要有りませんよ?」
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