「Shining road」~堂城川一朗~

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高らかにアウトの声が球場に響いた。 バルカンズの応援席がワッと沸くのを感じる。 オレはゆっくりと立ち上がろうとしたが、左肩に針を刺した様な痛みが広がり、その場に蹲った。 「おい!大丈夫か!?」 マウンドから堂城川さんが近寄る。 異常を察知して、選手が周りに集まってきた。 「大丈夫でやんすか!?」 矢部くんがオレに声をかけてくれたが、オレはうなづくことしか出来なかった。 監督がオレに近付く。 「今、タンカを呼ぶ。もう少しの我慢だ」 「いえ……監督。オレ、やります!」 オレは叫んで立ち上がった。 今、ここで下がるわけには……いかない! 「アホなこと言うな!」 オレの言葉に堂城川さんが叫ぶ。 「お前はプロやろ!体が資本とちゃうんか!?シーズンはまだ続くんやぞ!ここで無理してどないすんねん!……分かったら、六道と代われ!」 「……嫌です。オレはまだ出来ます!やらせてください!お願いします!」 「私だったら……」 六道さんが見かねて口を開いた。 「私だったら今のクロスプレーで吹き飛ばされて、点を入れられていた。今のはお前の功績だ。続けられるのなら続けろ。だが……無理はするな。無理だと感じたら私が居る、案ずることはない」 「六道さん……」 選手はそれを聞いて一人、二人とベンチに戻っていく。 そこで初めて球場がざわついている事に気が付いた。 「返事してやれよ。盛り上がるぜ」 猛田に言われて、オレはバルカンズの応援席に手をあげた。 ざわついていた球場が再び歓声に包まれた。
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