王子様の陰謀

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「はい香織ちゃん」 言葉と一緒に、茶碗にもられた白いご飯が目の前に置かれた。 「あ、どうも」 ニコリと笑顔でぉ礼を返す。 「沢山食べてねぇ」 そう言って、愁の母親はキッチンにある冷蔵庫へと向かった。 2階からリビングに降りてきて聞いた説明に香織は驚いた。 ここは愁の実家らしい。 そして先程の女性は愁のお母さん。 更に、兄弟が愁の他に4人いるらしい。 「なんで一人暮らししてるの?学校ならここからでも十分通えるじゃん」 香織はみそ汁をズズっと吸いながら、隣でハンバーグを突く愁に聞く。 「下に4人いるからね。早く部屋空けてやりたかったし、一人暮らしもしたかったし」 声だけが香織にむけられる。 「そっかぁ。ってゆうかなんでカルアにいたの?」 「お前がいると思ったから」 その台詞を聞いた香織は、飲んでいたみそ汁を口から吐き出しそうになったが、寸でのところで堪えた。 「はっ!?なんでこの辺にいるのが解ったの??」 慌てる香織に対して、愁は静かにご飯を食べ続けている。 「遊びに行くのは廊下に居て聞こえてたから。それならこの辺しか無いだろ」 「それ…スト 「なんか言った?」 ストーカーと言いかけて愁に笑顔で静止される。 「いぇ…何も」 笑顔に脅された様に、おずおずと引き下がって香織も食事を続行した。 「ご馳走様でした」 香織はお腹が満たされて満足そうな笑顔をした。 それを見て愁が「子供みたい」とからかう。 「子供じゃないもん!!」と反論しながら食後に出されたお茶を飲んでいた。 二人でややしばらくじゃれている横で、愁の母親が嬉しそうに笑っていた。 「それじゃぁ、お邪魔しました」 玄関前まで見送ってくれた母親に向き直って、香織はぺこりと挨拶をした。 歩きだそうとした香織を母親が引き止める。 「愁の事、よろしくね」 「え?」   そう言うと、母親は少し悲しそうな顔をして言った。 「あの子があんなに楽しそうにしてるの久々に見たから」 香織が笑って「ハイッ」と返事をすると、「ありがとう」と優しい笑顔をした。 「行くぞ?」 いつまでも来ない香織を愁が急かすと、「気をつけてね」と母親は家の中へと入って行った。
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