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暗くて深い森。夜闇に包まれて、視覚さえ奪われてしまっている。
頼りになるのは己の耳と触感、足だけだった。
「ハァッ……ハァッ!!!!」
「小娘を捕まえろ!!!!」
「おぅ!!!!」
息が切れて苦しい。立ち止まりたい、休憩したい。
だが、もし止まったら、その時が私の最後となるのだろう。
そう考えると、足は今まで以上に動いた。
きっと逃げきれた頃には足が壊れるのだろう。
そう勝手に察した。
「私は何処まで走れば良いの?」
だんだん声が震えてきた。
涙は枯れて出てこなかった。
----早く捕まえろ!!!!
----報酬は千万で良いか?
「(良いわけ……ない。私が……何で捕まらなきゃいけないのよ……」
《おいで……》
「!?」
《助けてあげよう》
「貴方は誰?」
《私?私は水神の紫永。さぁ、早く!!あの祠に入ってくれ》
「あれ?」
不思議そうに指を指してから、その祠に入ってくると周りを水のベールが包んだ。
「もう大丈夫、ここは俺の領域(テリトリー)だ」
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