466人が本棚に入れています
本棚に追加
/468ページ
「君が覚えていなくても俺は覚えてる。君は大切なものの為なら死んでも構わないと俺に言った。その決意の強さも想いの深さも、俺は知っているつもりだ……」
無言で俯くラルフィーネにアールは話し続ける。
「でも、君は生きてくれた。生きる道を選んでくれた。君が生きていてくれて本当に良かった。死を選ばないでくれて……俺は嬉しい」
アールはそっと膝を折りラルフィーネの顔を覗きこんだ。
「そんなに自分を責める必要なんてないんだ。君は……その大切な記憶と引き換えに、俺達にとっても掛け替えのないものを救ってくれたんだから」
夢のように安らかな、
暖かだった幼い頃の想い出。
グレスと出会い、
愛した……。
その大切な記憶を、
グレスのために……。
「……ラルフィーネ」
呼ばれて不意に顔を上げると目の前にアールの笑顔があった。
「君は新しい人生を歩み出そうとしているんだ。今度こそ、君が愛する人と幸せになるために……」
アールの言葉と笑顔にラルフィーネは薄く微笑み小さく頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!