ため息

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廃倉庫は山中にある為まずは山を下らなければならない。 深い緑にセミの音が夏らしさをさらに濃く演出しているが、住民にとってはいつもの当たり前のソレであった。 しばらく車を走らせると高速道路の入り口だ。 田畑を貫くかの様に建設されたこの高速道路の周りには未だに建設反対を唱える色褪せたポスターや垂れ幕が開通後どれ程の時間が経過したかを黙って語っていた。 料金所で左ハンドルの不便さを改めて実感したが帰りの料金所まで忘れているだろう。 愛車のバンも滑る様に滑らかにとは行かないが、なかなか良好な乗り心地ではある。唯一この排気音を除けば更に良好な移動空間であるに違いないのだろう。 CDのアルバムが2枚程流れた頃、渋滞が始まった。 「チッ。」 この高速出口はいつも渋滞しているが、ここを下りないと遠回りになる。 イライラしながらもなんとか渋滞を抜け、幹線道路をしばらく走ると桜と孝の待つ場所だ。 その場所とは桜の自宅なのだが日本屈指の高級住宅街と称される所で、初めて訪れた時に「閑静でいい所でしょ!芸能人も一杯住んでるのよ!」なんて自慢されたが
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