一章 不可侵領域

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まぶたを、少し閉じた。 焦っていても何も変わらない、し。 弱く、細い自分の息遣いしか聞こえない。 そのまま深呼吸をひとつだけ、 よし、落ち着いた。 この世でたったひとりの、家族に嫌われることだけは絶対に嫌だった。 ましてや、家族が消えてしまうことも、 だから僕は、我儘を言わない。 言ってはいけない。 僕は嫌われない様に顔色を窺っていればいい。
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