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発車を告げるアナウンスが駅のホームに響きわたる。
僕は慌てて自分のチケットを確認した。
(…まだ大丈夫だ)
顏を上げ時計を探して辺りを見渡し、ふと…ガラスに映った自分の顏を見つめる。
(幼いよなぁ…)
僕は今年で20才になる。正解に言うならば、後2日で20才になる。まだ幼さが残る顏は、服装によっては高校生に間違えられる事もあり、僕はその度に落ち込むのだった。
高校を卒業し、最初の就職先は二ヶ月で辞めた。
元々知り合いの紹介で入社したこの会社で僕は、「営業」に就いた。
他人と接する事が好きで、人当たりも良いと言われる僕にとって、「営業」は天職とも思えた。
が…
とても会社のやり方に納得が出来ず自分の上司を殴って辞めたのだった。
仕事とはいえ相手に嘘をつく事に我慢が出来なかった。とても強引な営業なんか出来なかったのである。
それからいくつかのバイトを転々とし、弟が就職したのをキッカケに地元を離れることにした。
僕には両親が居なかった。2つ違いの弟と二人、小さなアパートに暮らしていた。
そのアパートも引き払い、小さなカバンを1つ抱えて街を出ようとした。
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