序章

2/7
86人が本棚に入れています
本棚に追加
/135ページ
 流れる風景。  座席から伝わる心地よい振動。  電車に揺られながら、私は首を回して窓を見た。  短く切りそろえられた髪の下にある一重の細長い目。  心なしかその目は少し赤いように見える。  私はそれ以上自分の顔を見たくなくて、視線を再び窓の外に移した。  暦の上ではもう秋に入ったとこの前テレビで言っていた。でも、まだまだ照りつける日差しは強く、まったくそんな気配はしない。  そんなことを考えていたら、遠くにトンボが飛んでいるのが見えた。  赤トンボかな……。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!