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私は、井崎 操(いさき みさお)。
高校卒業したばかりの、社会人一年生。
と言っても、定職が見付からず、今はフリーターってトコ。
私の仕事は、カラオケ屋の受付嬢。
〇〇嬢って程の、美貌の持ち主じゃないけど、ブスじゃないと思う。
今までだって、適当に恋愛してきたし…。
今だって、片思い中だけど、好きな人がいる。
相手は、同じ職場の松 祐介(まつ ゆうすけ)君。
彼は、ホール係り。
歳も同じだし、何かと気が合ったりする。
彼は、私より後に仕事仲間になったんだけど、次第に惹かれていった。
今日は、週末。
有り得ない位のお客さんで、店内はてんてこまい。
週末営業は、翌日の朝5時まで。
私も松君も開店から働いてるから、夜10時に深夜勤務の人と交代をする。
だけど、すんなり夜10時に交代など出来ず、やっと上がれたのは深夜の0時を回っていた。
それは、ホールをしている松君も同じ。
女子更衣室で着替えて、従業員用の休憩室でジュースを買って、それをソファーに座って飲んでいたら、松君が男子更衣室から出て来た。
「あれ?井崎さんも今上がり?」
松君が、声をかけて来た。
「そう…今さっきね…。ホールもバタバタだったでしょ?」
私は、気丈に振る舞った。
本当は、心臓バクバクなんだけど…。
「マジでクタクタだよ…」
松君も、自販機でジュースを買って私の隣に座った。
「…………」
(何か話さなきゃ…)
私は、次の言葉が口から出ない。
「どうかした?」
松君は、返事をしない私の顔を覗き込む。
「…な、なんでもない!今日は疲れちゃって…」
自分の気持ちを悟られないように、嘘を付いた。
「そうなんだ。今日はゆっくり休んだ方がいいよ」
そう言うと、松君はソファーから立ち上がって鞄を手に持った。
(あ…帰っちゃうよ!何か話しかけなきゃ…)
「あの…松君…」
扉に手をかけようとしている彼に、声をかけた。
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