操の恋

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「何?」 松君は、手に掛けたドアノブから手を離し、私に視線を戻した。 「あの…さぁ~?」 私は、言葉が出ず、モジモジしていた。 「どうかした?なんか今日の井崎さん変だよ?」 「…お腹空いてる?」 適当な言葉で、その場をしのいだ。 「腹?減ってるよ?」 「私もお腹空いてるんだ~♪だったらさ…今からファミレスでも行かない?」 私は、松君を食事に誘った。 「ファミレスに?」 「うん♪」 「今から?」 「そう♪」 松君は、一呼吸置いて「今からは…無理だね…」と、低い声で呟くように話した。 「え…っ?どうして?」 私は、松君の言葉の意味が分からなかった。 「時間も遅いし、こんな時間から食事して帰宅したら、井崎さんの両親…心配するんじゃ?」 「あ…そだよね…」 私は、自分の事ばかり考えていて、その先の事を考えていなかった。 「まぁ、食事するのはいいとしても、俺と井崎さんの家は正反対なわけだし…。危なくね?」 「危ないってなに?」 「襲われたらどうする?」 「え~?私がぁ?」 「そうだよ…」 「ないないないない…。今まで襲われた事なんてないし…」 「井崎さんは甘いなぁ~。もしもの事を考えないと…」 「もしも…かぁ…」 私は、松君の言葉を聞いて考えた。 確かに、襲われない保証はどこにもない。 大丈夫って思っていても、男の人の力には敵わないわけだし。 「だから、今夜は止めよ?また今度誘ってよ!じゃあまた」 松君はそう言うと、扉から出て行った。 「…食事したかったのになぁ~」 私は、少し不満気に職場を後にした。
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