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落ち着いた時に思ったのだが、ひとつ、気になったことがあった。
姉が掴んでいた手は左手。気を失っていた時に握られていたのは右手だった。
姉は泳ぎがそんなに得意ではなく、浮輪もしていなかった。私を発見したのはごく浅瀬だったと言うし、矛盾が生じる。
沖まで私を助けに来てくれたのは、一体誰なのだろうか……?
ふと顔を上げると、私と同い年くらいの少女が目の前に立っていた。赤い水着を着ている。身体からは生気は感じられず、肌は青白い。
一目見て、彼女が私を助けてくれたのだと分かった。恐らく、海で溺れ死んだ少女なのだろう。
「ありがとう……」
口には出さずに少女へメッセージを送ると、彼女は泣き笑いのような顔をし、静かに消えていった。
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