530人が本棚に入れています
本棚に追加
/835ページ
"三日月"の連続攻撃。
鋭くカーブする軌道を描く特性を上手く活かして左右に揺さぶる。
『この…』
姫野は自分から逃げる打球に必死で食らいつく。
バックへ逃げる"三日月"を拾った。
しかし、そこに待つのはフォアへと逃げる"三日月"。
笹部は徹底して姫野を左右に揺さぶろうとする。
(このままじゃ埒が明ねぇ…。余程俺の本気がお望みらしいな)
再びフォアへと逃げる"三日月"を追いながら、姫野はニヤリと笑った。
笹部は姫野の笑みを見逃さない。
(来いよ…!)
完全に攻撃に回っていたが、姫野の打球に備えて台から僅かに下がった。
姫野の距離からでは拾うことはできても、逃げて行く"三日月"を強打するのは不可能だと思われた。
少なくとも、ギャラリー達はそう思っただろう。
しかし、不可能を可能にするのが"8強"。
『"弾丸"(バレット)』
姫野の口からその言葉が出るのと同時に、ラケットの先端で触れた"三日月"が低い弾道で笹部のコートへと突き刺さった。
しかし、それに備えていた笹部は上手く対処する。
姫野の打球が速い分、ブロックをするだけで急速は充分な物となる。
『何だ今の姫野の打球!?ラケットの先端なのに、なんであんなに速い球が打てるんだよ!?』
『それを止めた笹部もすげぇ!』
ギャラリー達の声を耳にしながら笹部は思った。
(このブロックで決まれば楽なんだけどな…)
笹部のブロックは姫野のバックを狙っていた。
コースも完璧で速さがある分、姫野がバックで捕えようにもラケットに届くことすらできない。
右手でラケットを持ったままなら…。
刹那、笹部の真横を姫野の"弾丸"が打ち抜いていた。
『こうすりゃ届く』
姫野がヒラヒラとラケットを持った手を振る。
ラケットを左手に持っていた。
右のバックハンドでは届かない打球を、左手にラケットを持ち変えることでフォアハンドで捕らえたのだ。
利高『久しぶりに見たけど…相変わらず器用な奴だな』
森『手首を返す事で放たれる打球はまさに弾丸。奴は拳銃使い。それも両利きのな…』
ー :2挺拳銃: 姫野 義明 ー
『さぁて、もう一丁いっとくか』
そう言うと姫野はサーブを構えた。
最初のコメントを投稿しよう!