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"三日月"の連続攻撃。 鋭くカーブする軌道を描く特性を上手く活かして左右に揺さぶる。 『この…』 姫野は自分から逃げる打球に必死で食らいつく。 バックへ逃げる"三日月"を拾った。 しかし、そこに待つのはフォアへと逃げる"三日月"。 笹部は徹底して姫野を左右に揺さぶろうとする。 (このままじゃ埒が明ねぇ…。余程俺の本気がお望みらしいな) 再びフォアへと逃げる"三日月"を追いながら、姫野はニヤリと笑った。 笹部は姫野の笑みを見逃さない。 (来いよ…!) 完全に攻撃に回っていたが、姫野の打球に備えて台から僅かに下がった。 姫野の距離からでは拾うことはできても、逃げて行く"三日月"を強打するのは不可能だと思われた。 少なくとも、ギャラリー達はそう思っただろう。 しかし、不可能を可能にするのが"8強"。 『"弾丸"(バレット)』 姫野の口からその言葉が出るのと同時に、ラケットの先端で触れた"三日月"が低い弾道で笹部のコートへと突き刺さった。 しかし、それに備えていた笹部は上手く対処する。 姫野の打球が速い分、ブロックをするだけで急速は充分な物となる。 『何だ今の姫野の打球!?ラケットの先端なのに、なんであんなに速い球が打てるんだよ!?』 『それを止めた笹部もすげぇ!』 ギャラリー達の声を耳にしながら笹部は思った。 (このブロックで決まれば楽なんだけどな…) 笹部のブロックは姫野のバックを狙っていた。 コースも完璧で速さがある分、姫野がバックで捕えようにもラケットに届くことすらできない。 右手でラケットを持ったままなら…。 刹那、笹部の真横を姫野の"弾丸"が打ち抜いていた。 『こうすりゃ届く』 姫野がヒラヒラとラケットを持った手を振る。 ラケットを左手に持っていた。 右のバックハンドでは届かない打球を、左手にラケットを持ち変えることでフォアハンドで捕らえたのだ。 利高『久しぶりに見たけど…相変わらず器用な奴だな』 森『手首を返す事で放たれる打球はまさに弾丸。奴は拳銃使い。それも両利きのな…』 ー :2挺拳銃: 姫野 義明 ー 『さぁて、もう一丁いっとくか』 そう言うと姫野はサーブを構えた。
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