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2人はしばし呆れたと言わんばかりに相手の顔を見つめるとやはり同時に座り……。
「「ふぅ……それでお嬢さん、どちらに用が有るんだい?」」
両方共自分が関係ないという確証が見つからなかったらしく、本人に訊ねる事にした。
「えっと……」
少女はおずおずと……恭介に視線を向けた。
「……え? 俺に?」
「ほらな」
恭介が困惑している隙にエリックは立ち上がって退散しようとした。
「ちょっと待ってくれエリック! 弟子ってなんなんだ!」
恭介が必死に引き止めようとした。
「文字通りの意味だ、君の魔法を習いたいと言っている……それだけ君の魔法は魅力的という事だ――名誉な事だ受けて損は無い」
振り向きもせずにエリックは遠ざかってゆく……。
「待て! お前は何人位弟子にしたんだ!」
エリックはそこでピタッと立ち止まった。
「――十数人が志願してきて……」
そこで首だけで振り返り爽やかな笑顔を作り……。
「――全員拒否した」
「待て! 名誉何だろ! 何故受けなかった! こら逃げるな! 頼む……!」
「――さて、1時限目はなんの授業だったかな?」
既に用はすんだとばかりにエリックは耳に入ってくる悲痛な雑音を完全に無視した。
恭介は唯一の頼みの綱を失い、ただただ呆然とした。
目の前には期待に目を輝かせる少女、静まり返り、成り行きを見守るような食堂の空気……。
その異世界化した食堂で孤立した恭介は額に手を当て……。
「――とりあえず君の話しは聞こうと思う……返答はその後だ、いいね? ――座って」
重圧に耐えられなかった……。
「はい! ありがとうございます」
「――返事はまだだって……」
恭介はついさっきエリックが言っていた自分の評価を思い出していた。
俺がトラブルを起こさなくても、トラブルが向こうから寄ってくれば大差ないか……と。
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