真相〈1〉

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「…よくよく考えてみれば、今回のこの一連の事件の犯人が、そんな少ない容疑者候補の中にわざわざ自分を入れるなんて、そんなヘマは犯さない。犯人はもっと頭のいい奴なはずだ。そう思い始めて、自然に2人を容疑者候補から外していた……」 竜彦は首を横に振った。 「だが犯人は俺が予想してたよりも遥かに頭が冴えていた……。あんたは俺がそう考えることを計算の上で犯行に及んだんだろう……」 竜彦がそう喋りかけても、鈴道は忍耐強く黙り続け、じっと竜彦の目を覗きこんでいる。 逆に自分が嘘発見器にかけられているような気持ちになり、これはいけないと竜彦は慌てて目を逸らして話を続けた。 「この事件において、2人を殺害するには、あんたはどうしてもペンションに残る必要があった。そのために利用されたのが、楠伊さんだ」 「私がか……!?」 先程聞いたようなセリフを再び口にし、楠伊は目を丸くして自分を指差した。 「史登さんがベッドで昏睡してる状況で、邦和さんを捜索しに鐘楼へ行こうというものなら、必ずペンションに残って史登さんを看病する役の人が必要となる。あんたはその役になろうとした」 「………」 鈴道はなおも黙り続ける。 「しかし、それには楠伊さんの存在が邪魔だった。楠伊さんは医者だから、ほぼ100%史登さんの看護役をつとめるからね……。そこで、あんたは睡眠薬を使って楠伊さんを眠りから覚めないようにした」 「そうか……。そんな目的で睡眠薬を飲まされたのか……」 楠伊は少し考え込むように足下を見つめながらつぶやいた。
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