始まりは玉砕から

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 今朝は快晴。琴美から仕入れた情報通り、駅前通りで一人佇む。予定時刻まで後僅か…。左手首に着けた腕時計を見ながら見据える方向は、唯一つ。 (来た…‼)  逸る気持ちを抑える為に深呼吸をする。後100メートル…、70メートル…、50メートル…。 「瀧田く~ん」  路地裏で隠れて様子を伺うアタシの背後から、何とも耳障りな甘ったるい声が聞こえてきた。同時に、軽快な足音も……。一歩、一歩。アタシに近付き…追い越し…彼の元へ。 (嘘でしょぉ⁉)  声の主は彼にまとわりつくと駅前通りを闊歩し始めた。思わず路地裏の更に奥に逃げ込んで、どうにかその場を凌いだアタシは、軽い放心状態だった。 『~🎵』  制服のポケットで軽快な音楽が鳴り響き、アタシは我に返った。二つ折りの携帯を開くと…案の定、琴美からの着信。 「…おはよ」  アタシは今受けた衝撃の重さを一言で語り尽くしてしまうんじゃないかと思える位の低い声で挨拶をした。 『園子…、どぅだった?とは聞かない方がいいみたいね』  流石は大親友。琴美は開口一番、労りの言葉を掛けてくれた。
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