始まり

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しかし、彼女の退屈は紛れなかった。 彼女は大きく溜め息をつく。 「美姫、お前はどう思う?本当に館を訪れるものは今日だと思う?」 「ナ~」 「お前が猫のままの日は余計つまらないわ」 再び彼女は溜め息をついた。 すると猫は彼女からスルッと離れソファーを飛び下りると、人の姿になった。 黒いメイド服。 肌も髪も黒くショートカット。 目はきつめで、瞳は緑色。 「ご主人様、お客様がもうじきやってまいります」 元猫を耳と尻尾に名残を残したメイドが言った。 「あら、やっぱり。ここにいて正解だったわ」 彼女は言った。 「退屈しのぎくらいになればいいのだけれど」 また、あくびを一つ。 「美姫、外は雨のようね。暖かい紅茶の用意を」 「分かりました」 「どんなお客様かしら。まあ、私の館にくる客はみな、何かを抱えているのだけれど」 彼女は言った。 どういう意味なのだろう? 彼女はなにを知っているというのか。 しばらくして、館のドアをいきなり開けて入ってきた女性が一人。 大事そうにしっかり赤子を抱えていた。
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