序章

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その昔、強大な力を持ったワンコがいた。 天の神々も、そのワンコを守護神に迎い入れ、更なる高みに上がろうと色々な神がワンコの元に訪れた。 守護神とも門番とも言われるワンコは、高い位の神を守護することにより、さらに自分自身高い修行を積むことができレベルを上げるのだが、その逆もあり強力な力を持つワンコに神が選ばれそのワンコが門番となった場合には、その神自身が更なる高みへと上がれるのである。 しかし、そのワンコは全ての申し出を断り続け、また自分の力を試すのと退屈な日々から開放されるべく、こともあろうに天から地に自ら降りたのであった。 その行為は、はっきり言ってこの時の天界ではあり得ない話であり、悪くすれば天そのものを敵に回し兼ねない行動であったのだ。 しかし、そんな決まりに我関せずと堂々と地に降り、その姿は威風堂々という言葉そのままであったという。 当然その違反行為に対して、ライバルのワンコや申し出を断られた神達は激しく非難失笑したのだが、そのワンコを抑える術も持たない為追放処分にしただけである。 その頃、地上に降り立ったワンコの体にある異変が生じ、全身きれいな白い毛並みがすべて真っ黒になったのである。今までも、地上に降り立ったワンコはかなりいたのだが、天界の指示による修行の為とか、神の使いとしてだけであり、自ら天の意思に背いて地上に降りたのはこのワンコが初めてのことだった。 天界に居てこそのきれいな毛並みも、天に背いて地上に降りるとこうなるのか、黒くなってしまったワンコは納得し、まったく気にすることなく地上探索への旅を始めたのである。 それから3ヶ月間、至る所で天界ではお目にかかれない魑魅魍魎、悪鬼や魔物などと戦い続けたのだが、黒のワンコにとってはまったく物足りない相手ばかりで、何故に神々や守護神と呼ばれる者達は、地上に修行しに来るのか理解できないでいた。 ましてや、自分勝手で私利私欲の塊である人間を守護し更には導くというのが、神や守護神にとってかなりいい修行になると聞いた事があるが、これこそ理解というより冗談じゃない部類と黒のワンコは思っていたのであった。 結局、退屈を満たす相手も見つからず、天に帰る事も許されない黒のワンコは、山の一部となり深い眠りに入ろうとしたのだが、ちょうどその時期に黒のワンコの生涯を決める一人の少女と出会うのである。
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